1ヵ月で売り上げ140億円の衝撃
スマホゲームアプリ「ウマ娘 プリティダービー」の勢いが止まらない。
同作は、実在の競走馬を擬人化したキャラクター「ウマ娘」を育成し、有馬記念などのレースに出走して一着を目指すシミュレーションゲームだ。
実在の競走馬をモチーフにした「ウマ娘」はそれぞれ人気声優によるCVが当てられている/公式サイトより
本来は2018年ごろにリリースが予定されていた同作だが、度重なる延期が続いていた。いよいよ今年2月末に公開、待望のタイトルということも相まって、その人気は爆発的だ。
運営元のCygamesによると、4月8日には累計DL数が500万を突破。わずか1ヵ月半での大台達成は、驚異的というほかない。
市場調査会社「センサータワーチャイナ」の調べによると、「ウマ娘」のリリース後1ヵ月の売り上げはなんと約140億円にものぼるという。こちらは公式の数字ではないが、パイの奪い合いが激しいスマホゲーム市場に彗星の如く現れた存在であることに異論はないだろう。
実際にプレイしてみると、単なる「萌えゲー」ではなく、伝統的な育成シミュレーションゲームの要素がふんだんに盛り込まれていることに驚く。それに加えて、3Dグラフィックの作り込みは丁寧で、競馬ファンでなくてものめり込めるシナリオのテンポも良い。
競走馬の美少女化というぶっ飛んだ発想にはなかなか驚いた人も多いかもしれないが、「ただ競走馬の実名の許可を取っただけ」のゲームとはまるで違う作り込みが、これだけの爆発的ヒットを巻き起こしているのだろう。
上場以来初の時価総額1兆円突破
アニメやマンガ(『ヤングジャンプ』連載中)など、他のスマホゲーと同じくメディアミックスもガッチリと固めている「ウマ娘」は、文字通り業界の「勝ち馬」になりつつある。
運営元のCygames、および親会社であるサイバーエージェント(4751)には、まさに「ウマ娘特需」の真っ只中にいるのだ。
2011年に誕生したCygamesは、「ウマ娘」のほかにも「グランブルーファンタジー」「シャドウバース」など、累計DL数2000万超えのモンスターコンテンツを擁する。
サイバーエージェントの主要事業は大きく分けて3つあり、そのひとつがメディア事業。「ABEMA」「アメーバブログ」などのインターネットメディアの運営だ。もうひとつがインターネット広告事業であり、創業以来同社の売り上げを支えている基幹ビジネスだ。
そして、Cygamesに代表されるゲーム開発が、サイバーの「3本目の矢」である。ここ数年、市場の成熟化にともなって若干の頭打ち感が否めなかったものの、今回の「ウマ娘」人気はブレイクスルー感を市場に打ち出した。
これに投資家が反応しないはずはなく、3月に入り株価は急上昇。上場以来初の時価総額1兆円の大台を突破したのだ。
的中率ズバリ80%を誇る『DeepScore株価予報AIエンジン』(DeepScore社開発・運営)の分析では、今週もサイバーエージェント株は「上昇トレンド」にあるという。
決算発表でどのような数字が出るか
DeepScore社企業調査部長の藤本誠之氏は次のように解説する。
「『ABEMA』は立ち上げ当初からひたすらキャッシュを食い潰していて、不採算事業と否定的に見る向きも多かったのですが、徐々に事業は改善してきているのがひとつのプラス材料です。
そのうえで、想定外の大ホームランが『ウマ娘』の登場です。熾烈を極めるレースに二人三脚で挑む育成シミュレーションゲームなので、馬主になった気分が味わえるのかもしれません。株価にも好影響を与えそうです」
4月28日には3月中間決算を発表するサイバーエージェント。「ウマ娘」が実際にどれだけ同社の業績を牽引しているのか、注目が集まる。
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続いて、今週の「上昇トレンド注目株」をもう1社紹介しよう。
それはセリア(2782)だ。
セリアといえば、100円ショップ業界ではダイソーに次いで2位の企業である。100円なのに100円に見えない「高見え」する商品で他社と差別化を図り、都心部と地方両方にバランスよく出店。販路を広げた。
特に巣篭もり生活中には、部屋を「映える」アレンジに使える生活雑貨がネットで話題に。若年層の女性からの支持が厚い。
ダイソーにどう対抗していくか
前出・藤本氏はセリア好調の理由を次のように語る。
「『おそ松さん』とのコラボグッズも人気を呼んでいます。また、コロナ禍による経済不安から、100円ショップ業界全体の売上が好調です。
野村証券が投資判断を『ニュートラル』から『バイ』に、目標株価を4200円から5000円にそれぞれ引き上げており、株価急伸しています。しばらく、上値が軽い展開が続きそうです」
100円均一でいえば、ダイソーが300円台の生活雑貨ライン「Standard Products」を立ち上げ、話題になっている。セリアはこれに対してどのような施策を打ち出してくるのか、今後に注目だ。
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最後に、AIエンジンが導き出す今週の「下落トレンド銘柄」を紹介しよう。
それは、ウエルシアホールディングス (3141)だ。
本コラムでもたびたび紹介しているとおり、イオン系列のドラッグストア最大手であるウエルシア。昨年はコロナ需要に湧いた企業のひとつだ。
今年に入ってからは、消毒液やマスク、トイレットペーパーの供給が安定しているように見える。インバウンド需要は戻らないことを考えると、ドラッグストア業界全体がプラマイで「マイナス」に転ぶ状況であることは否めない。
ゲーム市場の在り方を大きく変える
前出・藤本氏はウエルシアの株価トレンドについて、次のように語る。
「4月7日に本決算発表しており、今期経常は4%増で24期連続最高益、前期配当を1.5円増額しており、今期は実質増配となっています。
今期業績見通しはアナリスト予想を下振れ、株価は下落しています。しばらく、上値の重い展開が続きそうです」
4月11日、阪神競馬場で桜花賞が開催された。ネットでは、「ウマ娘」をプレイしたことで専門用語がわかるようになったなど、「ウマ娘の影響」がトレンド入りした。
小さな社会現象となっている「ウマ娘」が、競合ひしめきあうスマホゲーム市場の在り方を大きく変えるかもしれない。
そのようなわけで、今週の日本株市場では、サイバーエージェント、セリア、ウエルシアホールディングスの3社に注目していきたい。「今週のAI株価予報」とは
●DeepScore社が独自開発した株価予測AI『DeepScore社 AI』が、トレンド分析し、未来の株価を計算しています●「目標株価」は、翌営業日に80%以上通過すると期待される範囲になります(225銘柄でバックテスト検証済)●「押し目買いゾーン」、「吹き値売りゾーン」は、一般的には上髭下髭エリアです。一時的に値が動いた場合、その後目標株価へ収束する可能性が高いゾーンです。ゾーンを超えて推移した場合は、当エンジンの想定を超えるイベントが発生した可能性が高くなります●この予測をもとに個別銘柄の売買を勧誘・推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。
引用元:マネー現代