この記事は、海外在住8年目・オランダ在住5年目であるわが家、30代子育て夫婦がお届けしているポッドキャスト番組『海外移住家族の夫婦会議』の「第21回 ズバリ!海外移住した私たちが一番お金がなかったときの話をしよう」を一部文字起こししたものです。Spotifyやnoteでのフォローもお待ちしています。
今回のテーマは?
夫 今日のテーマは「わが家の海外移住がいかに無謀だったか」!
妻 サブタイトルがあるんでしょう?
夫 はい、サブタイトルは「私たちがいちばんお金がなかったときの話をしよう」。
妻 ヤバいな、これ(苦笑)。
夫 もういかにお金がない状況で海外に移住することを決めて、実際に行ったのか。
妻 はいはい。
夫 まあ、僕らのようにはならないでください、みたいな(苦笑)。
妻 反面教師。
夫 そういう話をしようと思っています。
妻 はい。
貯金ゼロで移住を決心
夫 僕らにとって初めての移住は東京からシンガポール。
妻 2013年1月か2月だったかな。

夫 実際にシンガポールに行こうと決めたのが、その前の年、2012年7月くらいだよね? あの時点で僕、貯金ゼロ。
妻 ププッ(笑)。
夫 ほんとにゼロ(笑)。そのころ、僕、独立して1年くらいで、自分の給料もままならないみたいな。
妻 それ、後から聞いたよね?
夫 ごめんなさい・・・・・・。当時はほんとに貯金してなくて、毎月自転車操業。だったんだけど、仕事の関係で、数カ月後にちょっとだけまとまったお金が入る予定になっていて。そのころにはもうシンガポールに行きたいと思っていたから、まだ入っていないお金を頼りにいろんな手続きを進めて・・・・・。
妻 それ、ヤバいな(笑)!それ、私も知らずに加担してたんだけどね。
夫 ほんとに知らなかった? 言ってなかった?「お金がない」って。
妻 それはいろいろ決まってから、後から知ったやん。シンガポールに行く、結婚する、その翌週ぐらいかな。
夫 プロポーズの後ってこと?
妻 うん。
夫 「いやあ、だまされたあ」って?
妻 結婚詐欺やな。
夫 ベタベタな手口(苦笑)。「実はおれ、金がないんだ・・・・・・」みたいな。
妻 アハハハ(笑)。
夫 どれくらい金がなかったかというと、僕が今いちばん思い出すのは、指輪が間に合わなかったこと。
妻 計画的にプロポーズしたわけじゃないから、婚約指輪はまずないやん。それで、婚約した後も指輪を買うお金がまずない。でも、結婚するなら結婚指輪は必要やん。
夫 あのころは、指輪は必要って、とらわれていたのかなあ(苦笑)。
妻 それで作りにいったよな。
夫 行った。
妻 ほんで、その指輪の代金を私のカードで払うっていう。
夫 そうだった。もうね、カッコ悪いよ。
妻 アハハハ(笑)。
夫 たぶんお店の人も「おや?」って思っただろうね。
妻 その前に、家族内でもひと悶着あったよね?
夫 え?・・・・・・あの「立て替え事件」?
妻 私が実際に払う前の話。
夫 ああ、そうそう。まあ、カッコつけようと思ってね。「ここは僕が」みたいにお金を出せる状況を作ろうと思ったんだけど、まあ足元見たら、ないわけで。実家に電話したんですよ。・・・・・・あれ、お台場だったかな。駅のホームで、奥さんがちょっと席外しているときだったと思うけど。
妻 そうやったん?
夫 実家に電話したらお母さんが出て。それで「結婚します。お金はありません。でも指輪は必要です。ちょっと工面していただけませんでしょうか?」みたいな。そしたら「無理です、ガチャン!」。
妻 アハハハ(笑)。そうやったん?!もう大変。
夫 もうどんな顔して奥さんに「払ってください」って頼んだのか。でもそのころにはバレてたもんね・・・・・・。
妻 うん、バレてる。
夫 同棲みたいなことしてて、シンガポールに行くと決めて、そこからはだいぶ節約生活したもんね。
妻 うん、飲みに行かなくなったもんね。
夫 それまでは毎週飲んでたのに。
妻 それで結婚して、シンガポールに行って・・・・・・。
夫 日本を発つ日、どこかに寄ったよね?
妻 百貨店。高島屋さんだったかな。今度は婚約指輪を作りに行って。
夫 婚約指輪も「必要」ってとらわれてたのかなあ(苦笑)。
妻 それで作ってもらって、後から実家のほうに送ってもらったよね。
夫 あのとき、僕、指輪のお金は払えたんだっけ?
妻 払ったんじゃない?
夫 たぶん、ギリギリだよね。
妻 そんなに高いものじゃなかったよね。
夫 もちろん(苦笑)。頼りにしていたお金が予定どおり入って、それでいろんなものを同時にいろいろ買ったんだよ。航空券とか。
妻 でもLCCで行ったよな。
夫 当然!シンガポール航空なんかとてもじゃないけど乗れない・・・・・・。
妻 羽田発、エアアジアや・・・・・・。マレーシアのクアラルンプール着いたら、バラック小屋みたいな空港やったな(苦笑)。
夫 風にあおられてパタパタみたいな。しかも、滑走路歩く・・・・・・みたいな。
妻 指輪は後日、私の両親がシンガポールに来たときに持ってきてもらった。
夫 それでいったん結婚の儀式が済んだ。
奥さんの海外就活
妻 でもよく海外に出ようと思ったよね? たしかにまとまったお金はゲットできるかもしれへんけど、まだ手元にないし・・・・・・。
夫 しかも「そのときかぎり」のお金だから。
妻 ああ、毎月入るわけじゃなくて。
夫 そうそう。だからいったんシンガポールに渡って、屋根のある家を見つけて、で、それが尽きるまでに何とかしよう、みたいな感じだったよ。

妻 ラッキーなことにシンガポールは英語環境やったやん。あなたはそれも知らんかったけど、私は仕事が見つかって。
夫 いやあ、それだいぶ助かったよね。僕がなんとかしようって水面下で足をバタバタしている間に、まず奥さんが就職できて、毎月安定したお金をいただけるっていうのは。
妻 せやな。
夫 シンガポールでの就職活動はどんな感じだったの?
妻 人材会社に登録して、仕事紹介してもらったね。私は配偶者ビザだったから、企業側が就労ビザを出さなくても働けたし、ビザに伴う給与のハードルも低かったから、比較的見つけやすかった。
夫 シンガポールでは、僕は自分の会社から自分に就労ビザを出していて、その配偶者も働けることになってたんだよね。で、どういう会社の面接受けたの?
妻 日系企業が多かったよ。当時、化粧品のオルビスさんがシンガポールに進出するっていうタイミングだったから、オルビスさんも受けに行ったし。あとは商社とか物流とか・・・・・・。
夫 やっぱり「日本人を採用したい」っていう?
妻 結構、秘書とかが多かったかも。
夫 ああ、トップの人が日本人で、そのアシストをやってくれる人。
妻 そう。それで、商社の秘書に落ち着いたんだよね。

夫 前職までは金融機関と英語研修の会社だから、秘書の経験ないよね?
妻 でもそういうのは大丈夫だったよ。むしろ、その会社は経験者よりも未経験者がよかったみたい。経験者は「私のやり方はこうです」みたいに固執しちゃうみたいだから。
夫 英語力は問われたの?
妻 とりあえず書類で「TOEIC900」。
夫 え、TOEIC900なの?!そ、そうなんですね・・・・・・ 僕、言えない・・・・・・(苦笑)。
妻 一応、シンガポール行く前に「TOEIC受けとくか」と思って受けてみた。
夫 なにそれ、めっちゃいやな感じ!
妻 だって、外国人の同僚とかと一緒に働いてたから。
夫 面接も英語だった?
妻 英語のところもあったよ。途中で「ここからは英語に切り替えます」っていうところも。
夫 英語でなに言うの? 志望動機とか?
妻 適当に会話する。前任の人が日本人じゃなくて、その人も交えて面接みたいなのもあったし。緊張した。
夫 するよねえ。
妻 「とりあえず自己紹介を英語でやってみてください」みたいな。
夫・妻 うう・・・・・・(苦笑)。
夫 めっちゃカンペ見ちゃいそう。よかったね・・・・・・ というか、助かりました。その節はありがとうございました(苦笑)。
旦那の起業奮闘
妻 でも自分も頑張ったやん?
夫 一応、航空券を買うお金くらいは手に入ったぞ、と。指輪は間に合わなかったけど(苦笑)。で、シンガポールに行くってことが決まったときに、日本のお客さんにひととおりご挨拶という名の営業はしましたよ。
妻 どんな?
夫 「これからシンガポールに行きますので、東南アジアに関するビジネスレポートとか、経営者インタビューとか、そういうコンテンツをやらせてください!」みたいな。
妻 おお。
夫 そのときの既存のつながりだけじゃなくて、このタイミングでこういう話を聞いてくれるんじゃないかな、というところは友達の紹介でまわったりして。その結果、今もつながっているお客さんとかいるし。

妻 ちょうどあのとき、東南アジアとかシンガポールあたりがちょうど「来るぞ!」みたいな。
夫 そう、ちょうど2013年ごろは、IT企業とか若い起業家が海外進出しようというとき、東南アジアの拠点としてシンガポールに出ようっていう流れの第一波だったんだよね。
妻 うんうん。
夫 だけど、僕みたいな編集者・ライターみたいな仕事ではなかなかそういう人がいなくて、あるとすれば現地に時事通信とか、日本経済新聞のベテランの記者とかしかいなくて。
妻 そういうところだと、あつかうネタとかも違いそうやしね。
夫 僕はどっちかというと、もっとWebやテクノロジー系だから。でもWebメディアの編集部が海外支局を立てるっていう感じは今でもないし。だから、使いやすい存在だったんだろうね(笑)。
妻 そういう「現地にいないポジション」をめがけていくみたいなのはいいのかもね。
夫 まあ、営業自信ないとか、恥ずかしい・・・・・・とか、そういうのはいったん捨てて、じゃないとどうしようもない。だって指輪も買えなかったんだから(笑)。
妻 せやな。
夫 でもそのおかげで指輪が買えたんですよ!(笑)
妻 アハハハ(笑)。
海外移住は「なんとかなる」のか?
夫 いやあ、でもまあ、みなさんはもっと計画的にやられるんでしょう(笑)。
妻 一個、プチ面白エピソード思い出した。一回シンガポール下見に行ったやん。
夫 なに? うん、行った行った。
妻 その準備しているときに、地図見て「あ、シンガポールってここにあるんや!」とか言い出したよね(笑)。
夫 そうだっけ?
妻 で、「公用語、英語なんや、よかった〜!」みたいなことも話してて、「なに言ってるんや、この人は・・・・・・」と思ったりして。無謀やな~と(笑)。
夫 僕の中では「シンガポール=来てる!」っていう情報しかなかったから(苦笑)。
妻 ヤバっ(笑)!

夫 こういう言い方よくないけど・・・・・・ よくついてきたよね?
妻 まあ、アカンかったら自分でなんとかしようかな、と思って(笑)。
夫 え?!どういうこと、どういうこと?!
妻 離婚?(笑)
夫 あ、そういうことですか・・・・・・。
妻 でも、アカンとは思ってなかった。なんとかなる、と。
夫 「最悪、私が稼ぐ」ってそういうこと?
妻 まあ自分が働けば生活費くらいはなんとかなるかなあ、と。あと貯金も少しあったし。だから、資金が尽きそうになったら帰ってくればいいかな、みたいな。
夫 そうか、なるほどね・・・・・・。
妻 ・・・・・・ん?
夫 なんか、僕一人で海外行ってたらどうなってたかなって考えちゃった。
妻 どうなってたかなあ。
夫 一応やりたいことがあって行ったわけだけど、うまくいかないな、となったらきっとどこかに就職したり、今とあんまり関係のない仕事もやりながら副業みたいなことをやっていたのかな。それでも日本には帰らなかったかなあ・・・・・・ 分からないけど。
妻 うん。
夫 まあ、海外に渡航する半年前に貯金ゼロで、唯一頼りにしていたのがちょっとまとまったお金が入るという見込みだけ。で、行ってみたら、奥さんが全部なんとかしてくれたってことなのかな?(苦笑)
妻 いやいや。
夫 まあ、それに間に合うように日本でもいろいろやったから、全部ってわけじゃないけど。とにかくなんとかなるってことだね。
妻 ううん、大丈夫かなあ(苦笑)。
夫 でも「この人たちが大丈夫だったんなら、大丈夫だろう」とは思ってもらえるんじゃない?(笑)
妻 だって、前回の第20回で話したみたいに、厳しい出来事もあるから。
夫 ああ、「海外移住の暗黒時代」の話ね・・・・・・。
妻 ああいうこともあるから、みなさま、海外移住の際には重々お考えの上(笑)、私たちの話も取り入れつつ・・・・・・ いや、取り入れないほうがいいかも(苦笑)。
夫 (苦笑)。というわけで、今回は「私たちがいちばんお金がなかったときの話」でした。
妻 でした!
夫 それではみなさん。
夫・妻 おやすみなさ~い。
岡徳之 @okatch